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Blog of Ichi Kanaya / 金谷一朗のブログ

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    8 posts tagged art

    芸術を技術で囲い込まない

    駆け出しのころの米正万也さんが自作を川本喜八郎さん(人形劇三国志のひと)に送った時に返ってきた言葉.

    If you are making animation as your hobby, I can say “well done.” But if you want to be a pro, forget all your older works. Your next film will be your first film.

    芸術家は人と同じ事を出来ない.工学者は誰でも同じことができるようになってもらいたい(だから技術を開発する).

    以前そんな葛藤を感じたこともあった.でも,たしか中嶋悟さんだったと思うのだが,F1にセミオートマチックトランスミッションやアクティブサスペンション,果てはトラクションコントロールまで導入された頃,「もうドライバ(の技量が)いらないんじゃないですか?」という質問に対して「いや,戦いのレベルが上がるだけです」と答えられていたことを僕は思い出す.

    技術を囲い込めば数年はアドバンテージを確保できるかもしれない.でもわずか数年だ.(さすがにF1ではその数年が大きいので囲い込んでいただろうが.)そんな小さなアドバンテージよりも,技術をオープンにすることのほうがよほど新しい芸術のためになるんじゃないだろうか.

    というわけで,例えば Polyphonic Jump! のシミュレータ部分はオープンソースにしています.残りの部分も段階的に公開します.

    ALFA ROMEO Love Giulietta イベントの松尾高弘さん作品(ビデオ)に技術協力しています.

    僕は作品づくりもするのですが,彼と仕事をするときは一職人に徹しています.(あ,でもここで名前出しちゃったら職人に徹しているとは言えないですね.)良い例えかどうかわからないですが,音楽プロデューサが,別の人がプロデュースするバンドに入って演奏するような感じで,いつも新鮮な刺激をもらっています.

    彼と話しあって気づいたことのひとつに,メディアアーティストには絵の具が無いということがあります.最先端の技法を使ったアートは現在ではメディアアートと呼ばれていますが,かつてのビデオアートだって,映画だって,写真だって,それこそ水彩画だって,技師がいなければつくれなかったのです.

    いまメディアアートと呼ばれているものがやがて当たり前になり,アーティストはさらに次へ進んでいることを,僕は夢見ます.

    僕の正式な所属は大学院工学研究科,英語で言えば Graduate School of Engineering です.エンジニアリングの学校という意味ですね.英語圏で,産業革命よりも前はエンジニアリングのことをアートと呼んでいました.アート=ものづくり,ですね.アートの語源のラテン語アルスに対応するギリシア語はテクネ(英語のテクニックの語源)で,こちらはほぼ語源の意味がそのまま残っているようです.

    僕にとっては絵を描くことも電子回路を組み立てることも同じくアートでありエンジニアリングです.(現代の意味でいうテクニックも必要ですし.)

    エンジニアリングがサイエンスと合わさって,さらに直感力で切り通したものが,デザインなんだと思います.

    彼のために設計したコンピュータシステムのアーキテクチャを,来月一般公開できそうです.

    Update of the official site: new video from Hong Kong.

    アートは「問い」,デザインは「解決」.

    Art is a lie that enables us to realize the truth.

    芸術とは,真実を実感させる虚偽である.

    Pablo Picasso / パブロ・ピカソ

    Where the spirit does not work with the hand, there is no art.

    その手に魂が込められなければ,芸術は生まれないのだ.

    Leonardo da Vinci / レオナルド・ダ・ビンチ

    I would describe programming as a craft, which is a kind of art, but not a fine art. Craft means making useful objects with perhaps decorative touches. Fine art means making things purely for their beauty.

    私はプログラミングをクラフトだと思っています。クラフトは工芸(art)ですが、美術 (fine art) ではありません。クラフトとは役に立つものを作る事であり、そこには装飾が施される事もあります。一方、美術は美しさのために全てを注ぐ事なのです。

    Richard M. Stallman / リチャード・M・ストールマン

    熱(fever)があるので熱(heat)について考えてみた 3

    熱(fever)のあるうちに妄想まで書き終えてしまいたい.

    内部エネルギとは,ある系が持っている内部の分子の熱運動(ランダムな運動)の運動エネルギ(顕熱),分子間の総合作用に関するエネルギ(潜熱),化学結合のエネルギ(化学エネルギ),原子の核結合のエネルギ(原子エネルギ)である.分子の熱運動の運動エネルギと相互作用に関するエネルギの和を,非公式に熱エネルギ (thermal energy) と呼ぶ.

    ここは大事なことである.熱エネルギ (thermal energy) と熱 (heat) は異なるのである.実際,英語名から言えば熱エネルギは温度エネルギと呼ぶべきものである.

    分子の熱運動の運動エネルギの指標を温度と呼ぶ.

    熱と温度は異なるということの発見がなされたのは18世紀であるが,日常生活ではいまだに区別をつけない.それは,区別をする必要がないからである.

    物理学では,熱と温度を区別する必要があった.熱と熱エネルギの違いと言い換えてもいい.

    ここからが法螺である.

    芸術作品には温度がある.

    これは芦屋で教室を開いておられる画家から聞いた言葉であるが,抽象画と子供の落書きの違いは,その温度である.

    熱い作品と,そうでない作品がある.

    熱と熱エネルギの違いを思い出す.熱は,仕事と同じように,エネルギの移動の一形態である.熱エネルギとは,内部エネルギ(の一部)である.熱エネルギを計る指標を温度と呼ぶ.

    作品が持っているものは内部エネルギと呼ぶのが妥当であろう.(注意:今はアナロジーで話している.物理的にも論理的にも根拠があるわけではない.)

    例えば,真っ白なキャンバスの内部エネルギを基底状態として,ある作品は白キャンバスから dU だけ内部エネルギが高かったとしよう.内部エネルギを変化させる原因は,熱力学第1法則によれば,熱と仕事 (work) である.

    仕事とは,筆を動かし,絵の具をキャンバスに塗りたくるという行為である,としよう.それ以外の,なにか,目に見えないけれど,作者が作品に伝えたものを,熱と呼ぶことになる.

    このアナロジーは多くの点でいまだ不適切である.内部エネルギは巨視的には見ることができるものではないが,作品は見ることが出来る.熱力学の法則は,熱を仕事に変える方法,および仕事を熱に変える方法があることを示唆している(熱を仕事に変える装置をエンジンと呼ぶ)が,ひょっとしたら熱と仕事はインターチェンジしないかもしれない.

    それでも,妄想を続ける.

    作品が獲得したエネルギを dU とする.熱力学第1法則(仕事の符号を変える)をそのまま挙げると,

    dU = δQ + δW

    である.δQ が熱,δW が仕事である.エネルギの変化は,加えた熱と,施した仕事の量である.

    熱っぽいと,熱い法螺までふくようである.

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